桜美林大学 田中佑佳監督『シュウカツ』独占インタビュー

アメリカン航空共催「大学対抗ショートフィルムコンテスト」学生応援団独占インタビュー


今年、第32回東京国際映画祭のオフィシャルパートナーであるアメリカン航空と共催で行われる『大学生対抗ショートフィルムコンテスト』。
最終選考に選ばれた5作品の監督方に、同じ大学生で編成されたプロモーションチーム『学生応援団』が独占インタビューをさせて頂きました。

【第2弾】桜美林大学 田中佑佳監督『シュウカツ』


第2弾は、桜美林大学の田中佑佳監督にインタビューしました。5作品の中で最も長い14分41秒の作品。「生」と「死」をテーマにした最後まで考え深い一本です。

応援団/小川(以下、小):タイトルにもある「シュウカツ」だけに、面接をしているシーンから始まっていましたね。今回の作品を作るきっかけはなんですか?

田中佑佳監督(以下、田中):今作のプロデューサーと脚本を担当した太田とよく「死生観」について話すんです。“なんのために生きているのか”とか“死んだらどうなるのか”とか哲学のような話をしていて。そういうところから、それに関連する作品を作りたいという話になりました。原案は、劇中で面接官を演じている二橋のもので、それを基に太田が脚本を描きました。
私たちが生きてきた20数年の人生には、節目節目で試験がありますよね。例えば、大学に入るための大学受験とか、社会人になるための就活とか。じゃあもし、「死」を選んだ人が“死ぬための試験”があったら面白いんじゃないか、と考えたのがこの作品を作るきっかけです。

小:主人公のナオキが、ある意味その試験を一つ乗り越えた社会人1年目の年である理由はありますか?

田中:一番自分たちに近い年齢だからです。就活、しんどいじゃないですか。何回も面接に行って、何回も自分のことを話して。そういうことを乗り越えて社会人になったのに…っていう。

小:なかなか重くズッシリとしたテーマだと思うんですけど、中でも役者さんの演技力がメンバーの中でも話題になりました。
田中:これはちょっと裏話なんですけど、実はナオキ(主人公)とトモユキ(主人公の友人)以外は全員同期が演じているんです。

小:同期というのは、同じ専攻の同期ってことですか?

田中:そうですね。原案の二橋は他にも面接官役と美術を担当してもらいました。脚本とプロデューサー担当の太田もシーンの中で走ってますよ。(笑)

小:自分たちで役者もして、裏側の仕事もしてってことですか!本当に自分たち仲間の作品って感じなんですね!

田中:そうです、本当に低予算な。(笑)

小:ちなみにご予算どれくらいだったんですか?

田中:2万円です。役者さん2人の交通費とスーツ1着分しかかかってないですね。役者さんにも、交通費しか出せないですよっていう交渉をしてるので、本当にいっちばん低いです。

応援団/久保川(以下、久):面接のシーンは全て川辺での撮影だったと思うんですが、川辺撮影で印象に残っていることはありますか?

田中:川辺での撮影は結構ゲリラでした。潮が引いてる時に「あそこ撮れるじゃん!」という風に撮影を始めて、日が暮れたから「明日撮ろうか」となっても、次の日には潮が満ちていて、場所がない...みたいな(笑)物語の中でもこの“川”というのは最初から最後まで重要な意味を持つので、ぜひ注目してほしいです。

小:作品を観ていると、やはりメッセージ性が強く伝わってくるな、という印象を受けました。いつも制作される作品にも監督なりのメッセージは込められているのですか?

田中:作品ごとにやりたいテーマを持ってから脚本づくりなどには取り組むようにしてます。今回は「生」と「死」について。現在も卒業制作として、メッセージを込めた制作に取り掛かっています。

小:最後に、この作品をご覧になる方に向けて一言お願いします。

田中:同年代に見てほしいのがあって。疲れたなら休んでもいいし、逃げてもいいけど、その「逃げる」っていうのは「死」の方を選ぶんじゃなくて、自分なりの逃げ道を探してほしいです。決して誤った道は選択しないでほしいです。

インタビュー後にもう一度それぞれのシーンに注目して観ると、最初よりもさらに心に重く響くものがあります。落ち着いた雰囲気の田中監督ですが、メッセージ性の強い作品が生み出されており、世の中に対する思いや疑問はとても熱く、私たちの心にも響くものばかりでした。

こちらのインタビューの様子は、動画からもご覧になれます‼️

以下のリンクから作品視聴、チケット購入が可能です



田中佑佳
たなか・ゆか|1996年生まれ。
桜美林大学芸術文化学群映画専修に所属。
今回の『シュウカツ』が初監督。今年度に卒業制作で
『VOICE』を監督、脚本。現在ポスプロ中。


記事執筆:高林香紀

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番外編

以下、ネタバレ前提のインタビューとなっております

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※鑑賞された方はこの先へお進みください※


桜美林大学 『シュウカツ』田中佑佳監督の“死生観”に迫る


久:最後のシーンで、川辺に石が2つ投げ込まれたシーンが印象的だったんですけど、そこにはどんなメッセージが込められていますか?

田中:あのシーンを入れるか入れないかはすごく迷ったんです。作品の終わり方は、部屋で一人で最期を迎えるという寂しい感じを出したんですが、彼にとってはハッピーエンドにしたかったんです。
全然ハッピーな結果ではないけれど、“心の拠り所のところに行けた”という。本当は、そんなことはしてはいけないってことを伝えたいんですけど、彼にとっては少しでもハッピーエンドにしたい、という意味であのシーンを入れました。向こう岸に行けて、やっと友人に会えたっていう思いを込めています。

小:友人も主人公も結構若い年齢設定っていうのは身近にそういうエピソードがあったというわけではないですか?

田中:そういうわけではないです。一般的なドラマとか映画の中に出てくる自殺とかって、その人にとって人生の“劇的な何か”があって、現実に耐えられずに一歩踏み出してしまうと思うんです。だけど、現実は自殺のハードルはそんなに高いものではないんじゃないかっていう話を脚本の太田とよくするんです。
年齢が若く、どうしたいいのかわからないし、頼り方もわからない、まだそんなに社会に出てない人が特に危ないんじゃないか、というところから年齢設定をしました。

−−−監督の一番印象に残っているのは「二次試験 体力検査」のシーンであるそう。このシーンでも若者へと投げかけるメッセージが込められていました。


田中:あの体力検査では、ゴールした人が喜んでいます。あのテストは、まだ生きる活力があるかどうかのテストなんです。まだ体力も、生きる活力もあって「まだ死にたくない」と思ってる、懸命に走ってゴールテープを切った人たちが不合格なんです。でも主人公はそれもなくなって合格します。試験に受かるたびに暗くなっていく。それだけ生きることに疲れていたってことですね。絶望というか、“疲れている”。主人公にとって「死」が安らぎになっていることが怖いです。

小:後半の主人公が涙を流すシーンも印象的でした。

田中:泣き方については、力いっぱいではなく、弱々しく泣くよう指示しました。生きることに疲れた、というのが「死」を選択する一番の原因だと思うんです。最後まで、面接官は圧迫面接を続けるのですが、最後の「23年間お疲れ様でした」という言葉が彼が一番聴きたかった言葉だと思うんです。

小:最後まで圧迫面接にした理由はなんですか?

田中:「死」を選択したことをまずは責めて欲しかったんです。「なぜそんなことをしたんだ」とか「なぜ周りに頼らなかったんだ」とか。だから、面接官として1人現実で誰かが言いそうなことを言わせました。

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ネタバレ記事を読んで"あのシーン""このシーン"を紐解き更にグサッと来た方もいらっしゃるのでは?
田中監督、改めましてありがとうございました!

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