ダメ男は、ヒーローになったのか?『アイアムアヒーロー』

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こんにちは。暑い日が続きますねえ。

大学生の方はレポート課題などを引きこもってやっている方もいらっしゃるかもしれませんね。

これは僕のあるあるなんですけど、レポートを書いてると、ただの感想とか参考文献のまとめになっちゃうことありません?

そんなときに僕が繰り出す得意技があるんですよね。


「あなたの考えを論じなさい」というレポート課題が出されたら

「敢えて大胆な提言をしたい」

と一言添えることによって大物感を出すんです。


内容がスカスカでも、何一つ大胆な提言がなくても、この言葉があるだけで凄いことを書いている気分になれますよ。きっと教授だって「こ、こやつ、やりおる・・・」と怯みます。

まあ僕の場合、この一言を添えたレポートは毎度評価が芳しくないのですが

みなさんレポートを書く際は、積極的に「敢えて大胆な提言」をしていきましょう。

さて、ダメ男映画特集第二回は、レポート課題に苦しむ皆さんにスカッといしていただきたく、この映画を紹介します!

◇ 監督:佐藤信介

◇ 脚本:野木亜紀子

◇ 出演:大泉洋 有村架純 長澤まさみ 片瀬那奈 吉沢悠


「君の名は。」「シン・ゴジラ」が公開された2016年。

そんな邦画当たり年の映画シーンに、燦然と刻まれたゾンビ映画が「アイアムアヒーロー」なのです。

原作マンガの作者は花沢健吾さん(『ルサンチマン』『ボーイズ・オン・ザ・ラン』)。「非モテ」や「へたれ」男を描かせたら右に出る者はいないと言われるほど人気の漫画家さんですね!

監督は「GANTZ」や「図書館戦争」、「いぬやしき」などCG/VFX技術を駆使した作品を得意とされる佐藤信介さん。先月から「BLEACH」も公開されている今大注目の監督です。

それでは内容の方に移っていきましょう。


*以下、ネタバレあり。

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○ ダメ男は、「ヒーロー」に囚われる。

さて、今回もまずあらすじから確認していきます。

まず前半部分からみていきましょう。


漫画家のアシスタントをしている冴えない男・鈴木英雄(大泉洋)。若いころ新人賞に応募した漫画が佳作を取ってからというもの、何度も原稿を持ち込み、その度に持ち帰る毎日。同棲している彼女のテッコ(片瀬那奈)にも呆れられている。そんな中、ZQN(ゾキュン)=ゾンビが発生し日本中がパニックに。テッコは死に、英雄は猟銃を持って街に出るが、そこには地獄のような光景が広がっていた。英雄は街を脱出する際に出会った女子高生の比呂美(有村架純)とともに富士山を目指し、アウトレットモールにたどり着く。建物の屋上では避難した人間たちが集団生活を続けていた。そこで英雄は看護師の藪(長澤まさみ)、モールを仕切っているリーダー的存在の伊浦(吉沢悠)と対面する。英雄の持つ銃を気に入った伊浦は、英雄を取り押さえ銃を奪う。銃を手に入れた伊浦だったが、彼に従っていたサンゴという男が銃を奪ってしまう。サンゴ率いる一味と英雄は物資を得るべく食料庫へ向かうが、伊浦の謀略によって一味はゾキュンに取り囲まれてしまう。


今回の主人公もなかなか手強い。

大泉洋演じる鈴木英雄、とんでもない「へたれ」です。

彼が編集部に漫画を持ち込むシーンを観てみましょう。


編集者「(英雄の描いた漫画の台詞を読む)『俺が、君を守る』・・・え〜っと・・・」
英雄「(期待を込めた顔で)はい?」
編集者「(名前を思い出し)あぁっ・・・鈴木さんだ」

英雄「あ・・・鈴木です。鈴木英雄。ヒデオは『えいゆう』と書いてヒデオです」

(中略)

編集者「・・・いずれにしてもねえ、主人公・・・主人公がねえ・・・普通?普通なんだよねえ・・・何でいつもこうなるかなあ」

ヒデオは『えいゆう』と書いてヒデオです。

この自己紹介、さすがに痛いですねえ。聞いてるこっちがヒリヒリします・・・


主人公・鈴木英雄は「ヒーロー」に囚われた存在です。

彼は残酷にも生まれたときから「英雄」という名前を背負い続けています。

彼は英雄になりたい、ならなければならないという衝動を子供の頃から抱えて生きてきたのかもしれません。もしこの名前でなかったら「漫画家」という職業を目指してたかどうかも定かではないでしょう。

何にせよ彼は漫画家という特別な存在を目指し、マンガ新人賞を獲りますが、その後伸び悩む。そして現在に至るまで漫画新人賞(=ヒーロー)という過去の栄光にも囚われています。

現実は、彼女の家に居候して夢をダラダラ追い続ける才能のない漫画アシスタント。英雄が「普通」であることを既に見抜いている彼女(テッコ)はどんどん疲弊していきます。

彼は「ヒーロー」への憧れや固執が激しいあまり、逆に身近な彼女さえも守ることが出来ない「へたれ」になってしまうというジレンマを抱えているのです。

ゾキュンパニックが起きても、英雄はなかなかヒーローになれません。彼はある瞬間まで決して引き金を引かないし、引く勇気もないのです。その上、アウトレットモールでは、猟銃を伊浦・サンゴに奪われてしまうのです。


○ ダメ男は、「ヒーロー」になる?

仲間が次々に喰われていくなか、英雄はロッカーに身を潜める。一方、藪をはじめとした女性たちのいた屋上にもゾキュンが入り込み、瞬く間にほとんどの人間がゾキュンに殺されていた。比呂美を連れ命からがら逃げ出した藪は、無線機で必死に助けを求め、ロッカーの中にいた英雄は、外の無線機からその声を聞いていた。恐怖でロッカーから出ることができない英雄。しかし、藪の言葉を聞き、ついに英雄はひとり戦うことを決意。英雄は藪やサンゴと合流し、奪われていた銃を手に、駐車場に殺到するゾキュンたちと死に物狂いの決戦に挑む。


さて、そんな英雄ですが、とうとう立ち上がります。


何度も外に出るシミュレーションをして、その度に気がくじけるものの、

ロッカーの鏡に映った自分の顔を見て

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」

と叫びながらロッカーを飛び出すシーンはこの映画の大きな見所の一つでしょう。


そして、藪に襲いかかる伊浦の顔を猟銃で吹っ飛ばした瞬間

彼は“変わる”のです。

そこからは英雄の独壇場。

英雄がトンネルでゾキュンを倒しまくる一連のシーンは「最高」の一言ですね



○ダメ男コバヤシ、敢えて大胆な提言をする。

そして無事アウトレットモールを脱出するのですが

英雄は、ずっとなりたかった「ヒーロー」になれたのでしょうか???

ダメ男コバヤシ、ここで

敢えて大胆な提言をしたい。


英雄は、「ヒーロー」になんかなっていないと。


彼は、ロッカーを出て伊浦の顔を猟銃で吹っ飛ばした瞬間に

自分の身近な存在(=比呂美、藪)を守る存在

へと変身したのです。

劇中でゾキュンは「過去に縛られた存在」と言われています(ゾキュンになった後、過去の習慣を繰り返している)

すなわち、英雄が打ち倒しているのは「過去に縛られた存在=強いヒーローに固執する自分」であるとも解釈できるでしょう。

英雄はゾキュンを倒しながら、強いヒーローへと固執してきた自分を捨て去り、一人の人間「英雄」として大切な人を守ることにしたのです。


少し遡って、ゾキュンパニックのあと、英雄と比呂美が境内で話しているシーンを観てみましょう。


英雄「(名前を聞かれ)ヒデオ・・・えいゆうって書いて、ヒデオ」
比呂美「英雄・・・ヒーローだ」
英雄「名前だけね」
比呂美「英雄君といたら大丈夫な気がする。一緒にいても安全そうだし」
英雄「それは・・・男としたら・・・複雑な・・・」

比呂美「(笑いながら)褒めてるのに」


続いてラスト。藪は英雄に名前を尋ねます。そのときに英雄はこう答えるのです。


英雄「鈴木英雄」
藪「ヒデオ?」
英雄「ただの・・・ヒデオです」


彼は、思っていたような(マッチョイズム的な)ヒーローになんかならなかった。

ただ一人の人間として恐怖に立ち向かい、大切な身近な存在を守ったに過ぎない。


「ただの・・・ヒデオです」

この言葉にはそんな彼の想いが顕れているのではないでしょうか。

そう考えると

アイアムアヒーローは究極の

アンチヒーロー映画

だとも言えるでしょう。



○ダメ男コバヤシ、敢えて大胆な提言をする。その2

まさかのその2。

期待値もいまやマックスでしょう。(ザワザワザワ、、、、)

さあ、いきましょう。

ダメ男コバヤシ、敢えて大胆な提言をしたい!!!!!


このゾキュンパニックは全て英雄の妄想(夢)である!!!


だって。。。

最後のあのホワイトアウトと、エンディングテーマ『Home on the Range』の牧歌的な感じ。


あんなん、もうあれじゃないですか。あれ。


え、妄想落ち、夢落ち、そんな解釈許せないって?英雄が可哀想だって?

いいんです。英雄は大切なことに気づいたんだから。(ということにしておく)



○ ダメ男コバヤシの反省とおすすめ。

また無闇に「敢えて大胆な提言」をしてしまいました。

この一言があるだけで、凄い文章を書いている気がしてくるもんだから人間は不思議ですね。


さて、今回のダメ男のおすすめ映画は

「カメラを止めるな!」
「新感染」

のゾンビ映画二本です。

「カメラを止めるな!」は言わずもがな、今日本を席巻しているあの映画!僕も二回観てきましたが、二回とも劇場で大爆笑しました。

「新感染」は泣けるゾンビ映画として話題になった韓国の作品!つい先日、続編の製作も発表されましたね!こちらも素晴らしいので是非観てくださいね。


え?ダメ男映画特集なのに、ゾンビ映画おすすめし始めたぞコイツって?

安心してください。

どちらもダメ男、でてきますんで。


○ ダメ男予告。

さて、次回ですが

「her/世界にひとつの彼女」

を取り上げたいと思います。(変わるかもしれませんが!)

AIを扱った作品です。

ダメ男が「愛」を探す日々を見つめてみましょう。

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